鬼熊俊多ミステリ研究所

鬼熊俊多のブログ。『名探偵コナツ』連載中!

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名探偵コナツ

「ここのトイレマークってオシャレだね」 トイレ前を通りかかったとき、由乃が言った。 確かにそのトイレマークは独特だった。 だが、それをオシャレと感じるかどうかは人それぞれだ。私にはシンプルすぎて工夫が足りないように思えたし、マークの用途を成さ…

 名探偵コナツ 第74話  江戸川乱歩類別トリック集成(74)

「だから私はあなたに告ってない! それなのに告ったとか言わないでくれるっ? そんな噂を広められたら迷惑だわ!」「なんでそんな嘘言うんだよ? 確かにぶっきらぼうな言い方をしたのは悪かったよ。だからこうやって謝るために声をかけんたんじゃないか」「…

名探偵コナツ 第73話  江戸川乱歩類別トリック集成(73)

「あいつが手紙を盗んだに決まってる」 私たち探偵の前で彼女は言った。 私を含めてその場には十一人の探偵がいた。中途半端な数だが、とりあえず彼女はそれだけの人数を雇った。「私は間違いなく家から歩いて五分のところにある農協前の郵便ポストに手紙を…

 名探偵コナツ 第72話  江戸川乱歩類別トリック集成(72)

ぶー、と大輝が笑った。 教頭がはげていたからだ。人の身体的特徴を見て笑うというのはいかにも低能な大輝らしかった。そのため改めて軽蔑の念が募ることはなかった。 教頭は私が入学したときからはげていたのでその事実自体は驚くべきことではなかったが、…

 名探偵コナツ 第71話  江戸川乱歩類別トリック集成(71)

「とある会社の重要機密の書類が盗まれた」「内容は?」「それは教えてもらってないんだ。とにかく重要らしい」「犯人の目星は付いてるの?」「ああ。そいつの家を任意で家宅捜索したんだが見つけられなかった。社内でデータをプリントアウトしている映像は…

 名探偵コナツ 第70話  江戸川乱歩類別トリック集成(70)

体育終わり、教室に戻ってくると、五万円がなくなったと川田透が騒いでいた。 未だに現金派の人物なので現金を持ち歩いているのはおかしくなかったが、五万円というのは高校生が持ち歩くには額が大きかった。「なんでそんな大金持ってきたの?」「刈谷からP…

 名探偵コナツ 第68話  江戸川乱歩類別トリック集成(68)

生きてる人間なら隠れるのは簡単だ。 でも死んだ人間の方がもっと簡単だ。 ばらばらにすればいいし、ずっと逆さまにしてもおけるし、酸素のない場所において置くこともできる。私はわかりきったことを頭の中で反芻する。「面倒だな……」「だったらやめたらど…

 名探偵コナツ 第69話  江戸川乱歩類別トリック集成(69)

白昼堂々、宝石店に強盗が押し入り、宝石を強奪した。 店長はすぐさま通報した。 犯人は商店街の八百屋を通り抜け、迫ってきた警察官にキャベツを投げつけるも、結局は捕まった。「だがそいつは宝石を持っていなかったんだ。それで」「八百屋を通り抜けたと…

皮膚が焼けただれている顔のない死体が見つかった。 犯人はわざわざ被害者の死後に顔を焼いたというのに、そのポケットには免許証が入っていて、警察によって死体の身元はすぐに割れた。 二十代後半、コンサルティング会社勤めのイケメンだ。歯科のデータも…

 名探偵コナツ 第65話  江戸川乱歩類別トリック集成(65)

制服姿の私がリュックサックを背負って事件現場にやってくると、ちょうど容疑者らしき男が神津刑事に突っかかっているところだった。「だからその死体はどこだって言ってるんだよっ? ないだろ? 存在しない死体のためになんで俺を捕まえたんだ?」 ハッチバ…

 名探偵コナツ 第64話  江戸川乱歩類別トリック集成(64)

よろよろと教壇から出てきた大輝は床の上にうずくまった。まだ頭がはっきりしていないようだ。 私は大輝を集団用の縄飛びの縄ででぐるぐる巻きにした。ちょうどいいことに教壇の上に置かれていたからだ。 大輝は立ち上がろうとしたが、私はその肩を押さえて…

 名探偵コナツ 第63話  江戸川乱歩類別トリック集成(63)

大輝のセクハラがあまりにしつこいので脇腹に中断蹴りしたら、その場にうずくまりそのまま顔を地面につけてしまった。腕を取り脈を確認したが、痛みのせいで気を失っただけのようだ。 私はほっと息をつく。 名探偵が殺人なんてしゃれにならない。 廊下の向こ…

 名探偵コナツ 第61話  江戸川乱歩類別トリック集成(61)

「だからこれは事件じゃないって!」「事件」 と私は一言。「あのなあ。何でもかんでも事件だって決めつけるのは考え物だぞ。心筋梗塞だって医者も言ってるだろ」「でも解剖してないんでしょ?」「それは病死だってわかりきってるんだ。何でもかんでも解剖し…

 名探偵コナツ 第62話  江戸川乱歩類別トリック集成(62)

「なんでこんなことに・・・・・・?」 私はハンカチで口元を押さえながら窓に向かった。 あの窓を開ければ生き残る可能性はあった。 だが、窓にたどり着く前に私は床に膝をつき、その場に倒れた。息苦しさと吐き気で限界だった。 生きることを諦めるわけにはいか…

 名探偵コナツ 第60話  江戸川乱歩類別トリック集成(60)

「死亡推定時刻は午後八時。被害者の田代はグラスに入ったワインを飲んで死んだと思われる。即効性のある毒物だ。部屋の戸締まりはしてあった。だから誰か人が侵入して毒を飲ませたわけじゃない。自殺で決まりだ」 神津刑事は自信満々に言った。 私は冷静に…

 名探偵コナツ 第61話  江戸川乱歩類別トリック集成(61)

「だからこれは事件じゃないって!」「事件」 と私は一言。「あのなあ。何でもかんでも事件だって決めつけるのは考え物だぞ。心筋梗塞だって医者も言ってるだろ」「でも解剖してないんでしょ?」「それは病死だってわかりきってるんだ。何でもかんでも解剖し…

 名探偵コナツ 第59話  江戸川乱歩類別トリック集成(59)

「それにしてもひどい歌声ね」 私は由乃と同級生の三好早月の家に遊びにきていた。 そこで早月のカラオケを聴いたのだが、ひどいものだった。まさしくジャイアンだ。しかし、本人は実に気持ちよさそうに歌っていた。 なので私の指摘に、マイクを持ったままき…

 名探偵コナツ 第58話  江戸川乱歩類別トリック集成(58)

「被害者はアパート通路の壁から身を乗り出して転落、死亡か……。自殺じゃないよな?」 神津刑事は自信なさげに言った。「自殺するのに二階の通路から飛び降りるって事はないでしょ。頭から落ちて運悪く首の骨を折ってしまったけど、本気で死ぬつもりだったら…

 名探偵コナツ 第57話  江戸川乱歩類別トリック集成(57)

その少年は海水パンツと水泳帽を身につけた格好で亡くなり、少年が通う高校のプール上をうつぶせで漂っていた。 解剖の結果、溺死と判明したが、体内からはプールの水ではなく川の水が発見された。「ここから一番近い川でも一キロはあるぞ。なんで犯人はわざ…

 名探偵コナツ 第56話  江戸川乱歩類別トリック集成(56)

神津刑事はいつものように事件内容を女子高生である私に語り始めた。「頭部の傷跡から凶器はこの岩で間違いないそうだ」「二十キロぐらいある岩に頭を打ち付けて死んだ?」「それが、昨日までこの空き地にこんな岩はなかったそうだ。つまり、犯人がこの岩を…

名探偵コナツ 第55話  江戸川乱歩類別トリック集成(55)

そのマンションの一室はバリアフリーが行き届いていた。2LDK。床とドアの開閉部に段差はなく、広々とした造りだ。 トイレや風呂、キッチンなどには金属製の手すりが設置されていた。 寝室。ダブルベッドの置かれた窓際下の壁にも手すりが付いていた。ち…

名探偵コナツ 第54話  江戸川乱歩類別トリック集成(54)

高校の男子生徒が校長と抱き合った状態で地面に倒れて死亡していた。 だが、その校長はそもそも六十年前に死んでいた。現在の校長ではなく初代校長であり、生身ではなく彫像だ。上半身しかないものではなく、頭の先から爪先まである等身大のものだ。 つまり…

名探偵コナツ 第53話  江戸川乱歩類別トリック集成(53)

ここはとある屋敷の庭だ。テニスコート三面ぐらいの広さがある。辺り一面砂利で殺風景なことこの上ない。 神津刑事は溜息をついた。「もったいない。俺だったらパターゴルフのコースを造るね。金持ちの考えることはわからないな」「たぶん、雑草が生えるのを…

名探偵コナツ 第52話  江戸川乱歩類別トリック集成(52)

「風呂で溺死って所か。風呂での死亡率は高いからな」 神津刑事が蘊蓄を披露した。「直接的な原因はそうかもしれないけど、間接的原因は感電かも」「なんで?」「その人、すごく髪が長い。でもドライヤーがないの。どこにも」「あ……」「犯人が犯行に使ったド…

名探偵コナツ 第51話  江戸川乱歩類別トリック集成(51)

被害者は男子中学生、渡辺幹生。剣道場で倒れているところを宿直の教師が見つけた。その時にはすでに事切れていたため、教師は救急車ではなくパトカーを呼んだ。幹生はブリーフしか身につけていない姿だった。 剣道部に部員はおらず廃部になっていた。剣道場…

名探偵コナツ 第50話  江戸川乱歩類別トリック集成(50)

悲鳴を聞いて数秒後、私と神津刑事はその部屋に突入した。 アパートの一室だ。 ワンルームの中央には女の死体が横たわっていた。関根真理子。 その傍らに男が立っていた。 日渡努。 日渡からストーカー被害を受けていると、真理子は警察にかねてより訴えてい…

名探偵コナツ 第49話

「だから言ってるでしょ。大雨で車がやられて移動できなかったって。エンジンルームが泥だらけよ。動かせるはずがないでしょ」 工藤直美は言った。声こそ大きくないものの、それは叫び声のようだ。 私は工藤直美と立ち話をしていた。 工藤直美はドアを内側に…

名探偵コナツ 第48話  江戸川乱歩類別トリック集成(48)

私は歩いていた。目的地は決まっていないが、歩いていた。名探偵の呪いとも言えばいいのか、この周辺で事件が起きていると感じていて、いても立ってもいられなかったからだ。 銃声がした。 目的地は決まった。銃声のした場所に向かって走った。近くで機械音…

飯島正樹がまた別の店で万引きをしたらしく、そこの店主も佐藤由乃に盗品の回収を依頼した。前回由乃が依頼を達成しその評判が上がったからだろう。「この前は悪かったが、今回こそ孫は一緒にわしといたぞ。ちゃんとアリバイも証明できる」「犯行があった時…

 名探偵コナツ 第46話  江戸川乱歩類別トリック集成(46)

最近小学生の間で完全犯罪ブームでも起こっているのだろうか? 私の目の前で、佐藤由乃が万引きを行ったと思われる小学三年生の男児――飯島正樹を問い詰めていた。 目撃証言から有名な悪ガキである正樹が犯人だと見当をつけた由乃がその住所を調べ、こうして…