ある日、チューと鳴きながら、空からネズミが降ってきたの。ネズミは地面に着地して何事もなかったかのように歩き出した。
Ａ氏はそれで空を見上げたわけ。
ああ、ビルの屋上から落ちてきたんだなと見当をつけた。
それで、ずっと屋上を見てたの。
今度は、ニャーと鳴きながら、猫が降ってきた。屋上からね。猫も空中でくるりと回転すると、難なく着地を決めた。
そして、猫はネズミを追いかけ始めたの。
続いて、わんと鳴きながら、犬が降ってきた。こいつも着地を決めたんだけど、首輪をしていて、長いリードが屋上まで続いていたの。
犬が歩き始めると、ぎゃーっていいながら、人が降ってきた。手にリードを握ってたから引っ張られちゃったのね。
Ａ氏は人間があの高さから落ちて無事だとは思えなかったんだけど、他の連中は大丈夫だったからさ、今度も大丈夫なんじゃないかと思ってずっと見てたの。
どんどん落下してきて、そして、その人はＡ氏の上に落ちてきて、ぐちゃり。その人じゃなくて、Ａ氏が潰れちゃったの。
そのね、上から落ちてきた人は起き上がると、何事もなかったみたいに歩き始めて、犬の散歩を続けたの。長いリード持ってさ。
めでたしめでたし（笑）
この素晴らしい世界に祝福を！ よりみち！ (角川スニーカー文庫)
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