呪い。
そんなものあるわけがないと人は笑うだろう。
だが、あるのだ。
例えばここに江戸川小夏という名の少女がいる。
その名前を聞いてピンと来る者もいるはずだ。
そう、あの日本でもっとも有名な推理作家と同じ名字だ。
両者に血の繋がりはない。
あちらはペンネームだが少女の方は本名だ。
何を隠そう、この苗字こそが呪いだった。
少女の父はミステリ好き。江戸川乱歩も大好きで、江戸川という名字を持つ将来の妻と出会うと、その名字をぜひ我が物にしたいと思い結婚、江戸川家に婿入りした。
数年後、二人の間に男の子が生まれた。
当然のように父は息子に乱歩という名前をつけた。戸籍を持ったリアル江戸川乱歩の誕生だ。
さらにその八年後、娘が産まれた。
当然のように父はコ○ンとつけようとした。
だが、兄である乱歩が止めた。
絶対からかわれる、いじめられると妹の身を案じたのだ。
実際、兄・乱歩は小学校でいじめられていた。ある日、早熟なミステリ好きの同級生がその名について指摘した。それがきっかけで粗暴な連中が目をつけたのだ。
妹がコ○ンなんて名前をつけられたら自分と同じ目に遭う。そう思って必死に食い止めたのだ。
兄の粘りに根負けした父は渋々娘に小夏という名前をつけた。
それが私だ。
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