「風呂で溺死って所か。風呂での死亡率は高いからな」
神津刑事が蘊蓄を披露した。
「直接的な原因はそうかもしれないけど、間接的原因は感電かも」
「なんで?」
「その人、すごく髪が長い。でもドライヤーがないの。どこにも」
「あ……」
「犯人が犯行に使ったドライヤーを処分したって考えるのが普通よ。被害者が亡くなってから救急に通報するまで一時間近くあったし、その間にドライヤーはどこかで処分した。そうよね?」
私はそばにいた被害者の夫を見た。
夫は口を開いた。
「……口げんかして、それで怒りが治まらなくて、かっとしてドライヤーを投げ込んでしまって……まさか死ぬなんて」
被害者の夫であり殺人犯である男はその場で泣き崩れた。
名探偵コナツ 第52話
江戸川乱歩類別トリック集成(52)
【第四】兇器と毒物に関するトリック
(A)兇器のトリック
(3)電気殺人