鬼熊俊多ミステリ研究所

鬼熊俊多のブログ。『名探偵コナツ』連載中!

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お茶目な銀行強盗

 暇を持て余していた私は、とりあえず銀行強盗をやってみることにした。

 ――なぜって?

 そりゃ、他にやることがなかったからだよ。理由なんてそんなもんで充分だろ。

 そういうわけで、必要なものを物色するため、早速自室の押し入れの中をひっくり返す。 帽子とマスクを見つける。私の美しく整った顔を隠すためには絶対必要なものだ。この美貌はあまりにも人の目を惹き過ぎる。拳銃もほしいところだが……

 ――え? そんなに美形なのかって?

 自慢にしかならないけど、コンテストで優勝したこともあるんだ。

「瞳ーっ! 夜中なのにうるさいわよ!」

 階下で母親が叫んだ。突然思い立ったため、今が夜中の一時であることをすっかり失念していたのだ。

「わかってる! すぐに済むから!」

 怒鳴り返す。

 近所迷惑も構わず、今度は武器になりそうなものを探すため、引き続き押し入れの中をガサゴソと漁った。

 ――女の子が銀行強盗なんてやめた方がいいんじゃないかって?

 この男女平等の世の中に、その意見はナンセンスだね。それに男女雇用機会均等法って法律まであるんだ。それを利用しない手はない。

 ――利用するもなにも、そもそも非合法じゃないかって?

 私がそんなことも知らないとでも思ったの。もちろん知ってるよ。でも、現状では圧倒的に男の銀行強盗の方が多いわけ。私はその状況を是正しようと考えているのさ。

 ――ただの暇つぶしじゃなかったのかって?

 ……いちいちうるさいわね。そんなことじゃもてないよ。

 まったく。

「おばあちゃん、ひいおばあちゃんがうるさいから静かにしろって」

 いつのまにか襖が開いていて、高校三年生になる孫の洋子が廊下に立っていた。

「わかったからって伝えときな」

 犬を追い払うようにして、私はしっしと手を振って、孫を追い払った。洋子は嫌そうな顔をしたが、私の知ったことじゃない。

 ――いい歳なんだからやめた方がいいって?

 余計なお世話だよ。これからは高齢化社会なんだから、私たちが働かないで誰が働くって言うんだい。

 本当にさっきから、うるさいね。

 あんた、私に気でもあるの?

 ――何よ、その顔は? 


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