鬼熊俊多ミステリ研究所

鬼熊俊多のブログ。『名探偵コナツ』連載中!

MENU

 名探偵コナツ 第69話  江戸川乱歩類別トリック集成(69)

 白昼堂々、宝石店に強盗が押し入り、宝石を強奪した。
 店長はすぐさま通報した。
 犯人は商店街の八百屋を通り抜け、迫ってきた警察官にキャベツを投げつけるも、結局は捕まった。
「だがそいつは宝石を持っていなかったんだ。それで」
「八百屋を通り抜けたとき野菜のどれかに隠したのかもと思って調べた?」
「なんでわかった?」
「服にトマトの返り血がついてる」
「あ」
 私の指摘に神津刑事は自分のスーツを見た。
「だが見つからなかった」
「犯人はその宝石店近くの警察官よ」
「なぜだ?」
「店長が110番して一番に現場に向かうのはその人でしょ。その警官が犯人を取り押さえるとき盗んだ宝石を受け取っていた」
「八百屋の商品をひっくり返したり大暴れだったぞ。他の店でも暴れて、すごい必死だった。とてもグルだったとは……」
「迫真の演技をしたってことね。それにそうした方がそれらの店のどこかに宝石を隠したんじゃないかって思われて、共犯者の警察官は疑われにくくなる」
 神津刑事は深いため息をついた。
 同業者が悪事に手を染めたことを心からやるせなく思っているようだ。

 

 名探偵コナツ 第69話
 江戸川乱歩類別トリック集成(69)
 【第五】人及び物の隠し方トリック
 (C)物の隠し方
 (1)宝石