ぶー、と大輝が笑った。
教頭がはげていたからだ。人の身体的特徴を見て笑うというのはいかにも低能な大輝らしかった。そのため改めて軽蔑の念が募ることはなかった。
教頭は私が入学したときからはげていたのでその事実自体は驚くべきことではなかったが、昨日まではカツラをしていた。当然、人前で、少なくとも学校で外したという話は聞いたことがなかった。
それがなぜ急に外したのか?
事件の臭いがした。
真っ先に思いつくのは死体の頭に被せるためだ。それによって何かを隠したかった。むろんちゃんと調べればカツラとわかってしまうので一時的なものだ。
もちろん別の可能性も考えられる。
誰かを変装させるためか、あるいはマネキンを人間に見せかけるためか。
いろいろと使い道はある
数分後、やはりカツラが何かを隠すために使われたことを私は知った。
今朝、とある生徒が別の生徒の頭をバリカンで刈るという事件が起こり、教頭はその被害者にそっと自分のカツラを被せたのだそうだ。
名探偵コナツ 第72話
江戸川乱歩類別トリック集成(72)
【第五】人及び物の隠し方トリック
(C)物の隠し方
(4)その他