この作品、タイトルを先に思いついた記憶がある。
『このクラスには美人が多すぎる』
思いついた張本人である俺自身がこのタイトルに一目惚れした。とはいえ、著者としていろいろ反省点の多い作品だった。
かなり力を入れて書いている。それは参考文献の量にも現れているだろう(あくまで当社比だが)。ある種、勝負を賭けた作品だった。
だが、力の抜き方を分かっていない書き方、あるひとつの状態を表現するために多くなってしまった登場人物、主人公のキャラを立たせるために不必要なほど書き込んでしまった蘊蓄がこの小説を読みにくいものにしている。
そして致命的なのは、とある概念に具体性を与えていないため、話の芯が一本抜けているような読後感による治まりの悪さだ。
その結果、作者がテーマというかアイデアに振り回されて物語を制御し切れていない、あるいは設定の練り込み不足によるご都合主義的な展開が連続する、という印象は免れない(だけどあの概念が相手であれば致し方ないかなとも思う。何せあれですから)。
それでも一応、なんとか一本の小説には仕上がっているし、作品内にはなぜ『このクラスには美人が多すぎる』のか? の答えも用意されている。興味がある方はぜひご一読を。
このクラスには美人が多すぎる
イラスト:zomiozomio (tumblr.com)