鬼熊俊多ミステリ研究所

鬼熊俊多のブログ。『名探偵コナツ』連載中!

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名探偵コナツ

 名探偵コナツ 第44話  江戸川乱歩類別トリック集成(44)

離れから母屋への地面にぬかるみに足跡が残っていた。爪先の向きからして犯人が離れから母屋に向かう前に雨が降ったのだろう。 雨が降っていたのは午後三時から午後四時までの一時間だ。 被害者の母親が離れで被害者の遺体を発見したのが午後四時だった。 死…

 名探偵コナツ 第45話  江戸川乱歩類別トリック集成(45)

小学校低学年の眼鏡男子が神津刑事に声をかけた。アパート一階の部屋から争う声が聞こえたので様子を見てほしいというのだ。 神津刑事と私は顔を見合わせたが、眼鏡男子の案内でそのアパートに向かった。神津刑事は部屋のチャイムを鳴らしたが中から返事はな…

「奴が逃げられたはずがないんだ!」 神津刑事が叫んだ。 私たちの目の前にある小屋は半ば焼け落ちていて、小窓のある壁だけが残っていた。農家を営んでいる人の所有で、強盗犯が逃げ込んだ末路だった。「表のドアは神津刑事が見張っていたから、この小屋の…

 名探偵コナツ 第41話  江戸川乱歩類別トリック集成(41)

由乃は険しい顔で私に確認を始めた。「犯人は全員、手足を縛ってそれぞれの船室に閉じこめてあるよね?」「そうね。下山さんは縛られてないけど」 相田誠が殺人を犯したため、今は殺人未遂犯の下山猛の縄を解き、大型クルーザーの操舵を任せていた。常時、神…

 名探偵コナツ 第40話  江戸川乱歩類別トリック集成(40)

物が壊れる音を聞いて、B室、稲垣吾郎の部屋に私たちは向かった。 鍵を使って内開きの扉を開けると、ベッドの上に死体があった。ナイフによって首を切られたのだが死因だ。首がぱっくりと割れているので偽装死でないことは一目でわかった。 私と神津刑事、…

 名探偵コナツ 第39話  江戸川乱歩類別トリック集成(39)

ようやく大型クルーザーが島にやってきた。所有車の立花陽子は亡くなり、長年立花家に仕えてきた下山猛は嘆いた。五十代だ。普段は立花陽子の屋敷で使用人をしていたが、今回は船長を務めていた。その他に助手の相田誠も乗っていた。 被害者二人の遺体を収容…

 名探偵コナツ 第38話  江戸川乱歩類別トリック集成(38)

私たちはまだ島に閉じこめられていた。立花陽子の遺体はビニールシートにくるんだ状態で屋敷内の涼しい場所に運んだ。犯人の稲垣吾郎は部屋の一室を牢獄とし閉じこめておいた。警察が島にやってくるまでの一時的な処置だ。「ねえ、一緒に散歩に行きませんか…

 名探偵コナツ 第37話  江戸川乱歩類別トリック集成(37)

私と神津刑事は部屋の前に立っていた。ドアには回らない取っ手としてのノブがついていて、中からは閂をかけられるようになっている。「くそ。中から返事がないぞ」 そこから神津刑事の行動は早かった。肩からドアに体当たりしたのだ。ドアは開きその勢いで部…

 名探偵コナツ 第36話  江戸川乱歩類別トリック集成(36)

現場はアパートのワンルームだった。 四階。 ドアの鍵は閉まっていて、鍵は普段使い、スペアともに部屋にあった。 窓は人通りの多い道路に面していて、死亡推定時刻にアパート前で井戸端会議をしていた人たちの話によると、その窓から人の出入りはなかった。…

 名探偵コナツ 第35話(2)  江戸川乱歩類別トリック集成(35)

「あの落ち葉がすべて落ちたら僕は死ぬんだ」 と男は言った。「あ、間違えた」 私は病室のスイング・ドアを閉めると、下の階に行った。亡くなった少女・筒見綾はそこに入院していた。 先ほどの男が指さしていた木にロープの先を引っかけ、首をくくって亡くな…

 名探偵コナツ 第35話   江戸川乱歩類別トリック集成(35)

田中一郎が自室で首を吊って自殺していた。 発見したのは妻の早苗だ。 早苗はいつまで経っても起きてこない田中を起こすため、部屋の外から声をかけた。二人の寝室は別々なのだ。 ドアをノックした。そのときドアの響き方がおかしいことに気づいた。そのため…

 名探偵コナツ 第34話   江戸川乱歩類別トリック集成(34)

屋上のドアを開けると、人が仰向けに倒れていた。上半身の数カ所から血を流していた。そばには血のついたナイフと手袋が落ちていた。「……佐竹にやられた。あいつが突然襲ってきて」 倒れている男はそう言うと、目を閉じた。事切れたらしい。 屋上の隅に行っ…

 名探偵コナツ 第33話   江戸川乱歩類別トリック集成(33)

被害者は運転中に事故を起こして亡くなった。原因はスマホに気を取られての運転ミスと思われている。「すごいメッセージの量ね」 私は被害者のスマホ画面を見て言った。妻から大量のメッセージが届いていた。「しかもこの人、その一件一件にちゃんと返信して…

名探偵コナツ 第32話   江戸川乱歩類別トリック集成(32)

とあるマンションの一室で、若手女優・仁科舞が死体で発見された。死因は前頭部に一キロの鉄アレイの一撃を受けたことによるものだった。 玄関のドアは施錠されていた。 ベランダ側の窓は閉まっていたものの、施錠はされていなかった。しかし、十階建ての六…

 名探偵コナツ 第31話   江戸川乱歩類別トリック集成(31)

アパートの一室で私は一人の女と向き合っていた。「怒鳴り声がしたんです。彼女の部屋から」「なんて?」「火事だ! 逃げろって。確かそんな感じ」「それで?」「それで彼女は窓から逃げようとして転落して怪我をしたんじゃないですか?」 幸い一階だったた…

 名探偵コナツ 第30話   江戸川乱歩類別トリック集成(30)

サンタが死んでる。 そんなことを叫びながら佐藤由乃が教室に飛び込んできた。 由乃について校舎裏に行くと、サンタクロースが仰向けに倒れていた。赤と白からなるコスチュームをまとい、口元にも顎にも長く白い髭が生えていた。 一見して外傷はなかった。「…

 名探偵コナツ 第29話   江戸川乱歩類別トリック集成(29)

私と由乃は、小野田大樹と共に職員室前にきた。「それじゃ、後でね」「……はい」 私が言うと、小野田は殊勝に返事をし、それから職員室に入った。 なぜ小野田についてきたかというと、久しぶりに再燃した由乃に対するストーカー行為について説教するためだ。 …

 名探偵コナツ 第28話   江戸川乱歩類名探偵別トリック集成(28)

兄、江戸川乱歩は今の私と同じ年齢の時失踪した。兄は高校一年生、私が小学一年生の時だ。 失踪前、高校生探偵といえば、江戸川乱歩。江戸川乱歩といえば、高校生探偵だった。 その後、私以外に目立った活躍をしている探偵の話は聞かないから、兄が子供にな…

 名探偵コナツ 第27話   江戸川乱歩類名探偵別トリック集成(27)

夜、廃工場の前に私はいた。 地面に人の首が載り、その横に胴体が転がっていた。辺りには血が飛び散っていて、両者が生前はひとつであったことを想像させた。 首はこちらを向いていて、その顔が田村坂渉であることを確認した。「田村坂……」 神津刑事が呻いた…

 名探偵コナツ 第26話   江戸川乱歩類名探偵別トリック集成(26)

「解決はしなかったが、事件は終わった」 神津刑事はかっこつけて言った。 客観的に見れば、その台詞もそれを言う神津刑事もかっこよくはなかったし、その台詞の内容には誤りがあった。「事件はまだ終わってないよ」「この状況で言うか?」 私の指摘に神津刑…

 名探偵コナツ 第25話   江戸川乱歩類名探偵別トリック集成(25)

「こいつが犯人よ!」 我が家の隣に住む砂川楓が鈴木邦夫を指さした。 砂川楓は我が家の隣に住んでいる。 鈴木邦夫は砂川家の隣に住んでいて、砂川家を挟んで我が家の二軒隣だ。「そんなことはない。私がやるはずがない!」「あなたがやったのよ!」「私が、…

 名探偵コナツ 第24話   江戸川乱歩類名探偵別トリック集成(24)

ロープを持った犯人は、被害者がバス停から降りたところを狙った。被害者は死に、警察が遺体を運び去り、血の跡が残るだけになった現場に私はやってきた。 例の如く、神津刑事が私を呼び出したのだ。 中学生のときまでそんなことはなかった。それが高校入学…

 名探偵コナツ 第23話   江戸川乱歩類名探偵別トリック集成(23)

被害者は心不全によって亡くなった。 就寝中、ベッドの中での出来事だ。 被害者は心臓が弱かった。普通なら病死で片づく話だが、生前命を狙われているとうわごとのように言っていたとの証言があったため、警察が現場検証をすることになった。 神津刑事に呼ば…

 名探偵コナツ 第22話   江戸川乱歩類名探偵別トリック集成(22)

その死体、四十キロの鉄アレイが顔面を直撃したことが死因なのは一目瞭然だった。 被害者は七十五歳の男で、自室の布団上で寝ていた。周囲には薄いベニヤ板の破片が散乱していた。 そのベニヤ板とは対照的に厚みのある長方形の板が死体の腹の部分に載ってい…

 名探偵コナツ 第21話   江戸川乱歩類名探偵別トリック集成(21)

その喫茶店ではウイルスの感染対策として、客は入口で体温を測らなければならず、37度5分以上あると入店できなかった。 午後一時、店で事件が起こった。 店内の椅子のいくつかに犬の糞が置かれていたのだ。運悪くその上に座ってしまった客によって事件は…

 名探偵コナツ 第20話   江戸川乱歩類名探偵別トリック集成⑳

「事故だな」 神津刑事は言った。 死亡したのは芝山千春。二十八歳の主婦で、夫ともうすぐ一歳になる息子との三人暮らし。 二階建ての一軒家である自宅、その一階の居間で亡くなっていた。 死亡推定時刻は午後三時とまだ明るい時間帯だったが、防犯意識は高…

 名探偵コナツ 第19話   江戸川乱歩類名探偵別トリック集成⑲

友人の父親が階段から足を滑らせて転落、首の骨を折って死亡しました。 買い物から帰ってきた友人が発見したときには父親はもう息をしていなかったそうです。 そこで少し不思議に思うことがありました。 その友人の家を訪ねたことは何度かありますが、二階に…

 名探偵コナツ 第18話   江戸川乱歩類名探偵別トリック集成⑱

敷地の中央に、頂上の高さが人の身長ほどあるある公園、通称・丘公園。そこで殺人事件が起こった。「私、丘のところで人が倒れているのを見たんです」 携帯を使って警察に通報した田之倉葉月はそう証言した。田之倉は二十代前半の美人で、ウォーキングの途中…

 名探偵コナツ 第17話   江戸川乱歩類名探偵別トリック集成⑰

由乃と連れ立って私は交番にやってきた。「公園に痴漢が出たから捕まえて」 痴漢の現場であると説明した公園に警官と三人でやってきた。「犯人はどんな奴だったか覚えてますか?」「それが全然覚えてないんです……」 その若い警官の期待に由乃は応えることが…

名探偵コナツ 第16話   江戸川乱歩類名探偵別トリック集成⑯

「ない、ないよ!」 鞄の中身をひっくり返しながら小野田大樹が叫んだ。 その様子にクラスメイトが注目した。 私と佐藤由乃もだ。 そんな中、由乃がお節介にも近寄っていった。「一体何がなくなったの?」「それは……秘密です」 由乃が聞くと、小野田が言いに…